ゆみ
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日本だったら牢屋に入れられる?
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Q
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牢屋ときましたね。参ったな。十年ぐらいはぶちこまれますよ。〔すこしおどかしておく必用があるようです〕
ヨーロッパ以外の御旅行は?
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ゆみ
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昨年バリ島に行きました。びゃくだんの花のいい香り。やさしい風、すばらしかった。皆貧しいと思うんだけど、いい顔してるのね。子供の笑顔が輝いている。あんな島で生活したいな。何にも持たないで。物を持つとしんどいだけですもの。
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Q
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踊りなどはごらんになられた?
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ゆみ
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ケチャック・ダンスがよかった。村人たちが大勢空地に集まってきて、ケチャック・ケチャックと呪文のように唱えたり、少女たちが踊ったり。ストーリーがあって、音楽もいい。踊りは抽象的だけれど何か本質的な要素を表現していて、現代音楽や現代ダンスに通じるところがある。たとえばピナ・バウシュのダンス。子供が倒れては起き、倒れては起きするところなど。リアルであると同時にシンボリック。ひやっとする怖さもある。
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Q
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バリ島のたべものはどうでしたか?
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ゆみ
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どの土地へ行っても、その土地の人がたべるものがおいしいのね。レストランはどこへ行っても同じ味だけれど、通りがかりの屋台店とか小さなメシ屋とかでたべたもの、たとえばバナナの葉でつつんだ鶏肉のむし焼きとか、おそばにミートボールをのせたものとか、おいしかったな。
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Q
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お土産は買われました?
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ゆみ
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どこのお土産やさんにもすばらしい民芸品が沢山並んでいて、あれもこれも買いたくなった。特にプリミティフな木彫りの作品がよかった。
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Q
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ヒンズーのお寺も行かれました?
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ゆみ
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田舎の村をまわったときに行きました。芸術的モニュメントといった感じのものが多かった。お寺の庭の木陰で女の人たちがお供物を手でつくっていた。みんなそれはそれは美しいこと。あでやかなサロンを腰にまきつけて。
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Q
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今後どんな所に旅行をなさりたい?
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ゆみ
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いつか南アメリカに行きたいのです。まずはペルーへ。母が生まれて育った土地なので。それからアルゼンチン。
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Q
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どうして?
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ゆみ
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タンゴよ。タンゴが大好きなの。わたしの音楽そもそもの出発点は、教会の音楽とタンゴと詩吟なの。祖父がペルーにいたせいで、家族中カトリック。私も洗礼を受けたので毎週教会に行っていた。聖歌隊のおじさんがテノールでいい声をしていたし、神父さんがラテン語でお祈りしていて、その声をうっとり聞いていた。オルガン音楽もよかったわ。
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Q
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タンゴはどうして?
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ゆみ
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祖父をはじめ家族中タンゴが好きで、レコードがいっぱいあって、いつも聞いたり踊ったりしていたから。詩吟は祖父がペルーから帰ってきてから一つの流派をつくったのです。私がはじめて人前で舞台に立ったのは中之島公会堂。太田道灌の話に出てくる「狐鞍雨を衝いて茅茨を叩く。少年老い易く学成り難し」と堂々とうたったのが最初。
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Q
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あがりませんでしたか?
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ゆみ
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あがらなかった。十歳のときの最初のステージ。沢山の人の顔が見えました。
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Q
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すでに未来を先取りしていたんですねえ。
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ゆみ
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子供の頃は声が低くて、合唱のときもあると。小学校のとき、今井由美ちゃんという女の子がいてとても可愛い人で、声がきれいで、よく勉強ができた。その子が学芸会のとき独唱をするのね。私は今中由美だったから一字違いなのにずいぶん違うんだな、と彼女にあこがれていた。私は合唱団の端の方で、みにくいアヒルの子みたいに歌っていたんです。
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Q
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将来何になりたいと思ってました?
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ゆみ
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昔の作文、小学校の五年生のときのが出てきて、それを見たら「本の朗読が好きなので将来アナウンサーになりたい」って書いてあった。その前は動物園の飼育係でした。
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Q
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動物がお好きなんですねえ。
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ゆみ
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そう。動物大好き。植物も大好き。土の中から芽が出てくるのが好き。わたし植物ドロボーだったの。毎週、教会へ行って、今週はこれこれの植物を盗みました、って告白をしていたわ。すてきな木があると根を抜いてもってくるの。近所の家からすみれとひなぎくをだまってつんできたのが見つかって、どなりこまれたことがあるわ。
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